ここまでの2つの記事で
「親が入院して介護が必要になりそうな場合最初にできること3つ【入院初期編】」
についてお伝えしてきました。
親の病状が安定してくると、主治医から今後の方針について説明があります。
リハビリに特化した病院で、もう少し体の機能を向上させる目的で、転院になるかもしれません。
自宅での介護が難しければ、施設を検討しましょうという話になります。
自宅での生活が可能な場合、退院に向けて本格的な準備が始まります。
いざ親の介護が現実味を帯びてくると、不安や心配を感じるのは当然です。
そこでこの記事では、「親の介護が自宅で始まる前に退院までにできること6つ」をとりあげます。
退院した親の介護をするにあたって大切な心構えについてもお伝えいたします。ぜひ最後までご覧ください。
親の介護が自宅で始まる前に退院までにできること6つ
退院までにできる6つのことは以下のとおりです。
ひとつずつご解説していきます。
①入院先の医療社会福祉士に相談する
②親が住んでいる市町村の地域包括センターに相談する
③地域包括センターで要介護認定の申請をする
④要介護認定調査で聞かれることとこちらの情況の伝え方
⑤お試しで外出や外泊をしてみる
⑥退院前訪問指導をお願いする
なお、外出・外泊、退院前訪問指導に関しては、感染症のリスクのため各病院によって対応が変わりますので、入院先の病院にご確認をお願いいたします。
①入院先の医療社会福祉士に相談する
医療社会福祉士(メディカルソーシャルワーカー)は退院に備えて、どんな準備が必要か一緒に検討してくれます。
心配なこと・不安に感じること・疑問があれば、何でも相談してみてください。
医療社会福祉士が中心になって、主治医・看護師・リハビリスタッフなどに情報が共有され、チームとして退院までをサポートしていきます。
②親が住んでいる市町村の地域包括センターに相談する
親が入院前に住んでいた自宅に帰る場合は、親の居住地の市町村の地域包括センターに相談します。
同居や子どもたちの家の近くに引っ越す場合は、新しい居住地を管轄している地域包括センターに相談してください。
介護を始める人向けのパンフレットなどが準備されていますので、情報を集めておくことをお勧めします。
経済面での負担軽減につながる公的制度や、介護サービスについて知ることも可能です。
③地域包括センターで要介護認定の申請をする
要介護認定の申請に関しては、医療社会福祉士に相談するのが近道です。
申請時に提出が求められている、医師の診断書の準備を段取りしてくれたり、その他申請に必要な書類についても教えてくれます。
④介護認定調査で聞かれることとこちらの状況の伝え方
要介護認定の申請をすると、認定調査員が介護認定調査に来ます。
現在、感染症対策で外部の職員の訪問を制限している病院が多いので、このあたりは事前に医療社会福祉士にご確認ください。
介護認定調査で聞かれること
介護認定調査では、介護を受ける本人の身体能力や精神機能について聞き取りがあり、実際に立ちすわりといった動作の確認が行われます。
調査時にはなるべく同席して、現状を家族の方から伝えることが大切です。
調査員から「〇〇はできますか?」と聞かれると、本人は「できます」と答えてしまう場合があります。
実際にはこけないように誰かの見守りが必要だったり、
ふだんは手伝ってもらっているのに「できる」と言ってしまうことで、
要介護の認定結果が本人の状況と大きくかけ離れたものとなるからです。
本人が「できます」と言っても、
家族が「でも転びそうになることがあるので、いつも見守りをしています」と伝えることで
認定調査員はより正確に本人の状況を把握することができます。
こちらの状況の伝え方
こちらの状況を説明するときのポイントは、どれだけ親のサポートに手間や時間がとられるかを中心に伝えることです。
例えば、夜中に一人でトイレに行くのは危ないので、本人の横に介護者が布団を敷いて一緒に寝るといったケースで考えてみましょう。
実際にトイレに行くときには見守るだけで大丈夫かもしれません。
でも介護者は同じ部屋で寝たり、起きてトイレに付き添ったりして、ゆっくり寝ることはできず、時間と労力を使っています。
この場合、夜中じゅう介護のために時間をとり、神経を働かせ、手間をとられていることになります。
"横で寝ているだけ"、"トイレの時に付き添うだけ"と考えるのではなく、
「夜間はずっと付き添いが必要です」と認定調査員に伝えてください。
家族からの情報によって、認定調査員は介護者がかなりの時間をとられていることを把握できます。
要介護認定調査前に
退院後の生活のどんな部分で目を離さないようにしようと思っているか
手を添えて介助する必要があるか
家事や買い物を代行したり
通院に手間がかかるか
リストアップしてみましょう。
メモしたものを見ながら伝えてください。
本人が介護者に対して不快な発言をしたり、介助に抵抗して手を挙げるといった点も遠慮せず伝えましょう。
筆者は、義父の要介護認定調査前に介護状況を紙面にして、認定調査員に渡しました。
本人の目の前では言いにくいことを書きました。
例えば、認知症の傾向がみられることや、以前に比べてこだわりが強くなって感情的になるなどです。
書面を活用することで、的確な認定結果につなげることができました。
事前の準備をやるのとやらないのでは、大きな違いがあることはお分かりいただけたと思います。
しかし、感染症対策のため入院中の面会が禁止となっている病院がほとんどかもしれません。
その場合は、看護師やリハビリスタッフに、要介護認定調査の際にどんな点を伝えたらいいか事前に相談してみてください。
伝えるべきポイントを教えてくれます。
⑤お試しで外出や外泊をしてみる
外出・外泊は病院の許可次第にはなりますが、可能ならお試しで一緒に自宅に帰ってみてください。
本人も家族も、「あ、これぐらい動けるんだな」とか、「ここは気を付けないと危ないな」といった気づきが見つかると思います。
お互いに退院後の生活をイメージしやすくなるので、状況が許せば、ぜひ数時間でもいいので、帰ってみましょう。
⑥退院前訪問指導をお願いする
退院前訪問指導とは
退院後に安全に自宅で生活するには何が必要か把握し
介助のポイントを指導するため
主にリハビリスタッフなどが退院先となるご自宅を訪問するものです。
手すりの設置や段差の解消
どんなものをレンタル・購入するといいか
改修工事が必要か
などの提案を受けることができます。
ここまで、退院までにできる6つのことについてご解説しました。
続いて、退院した親の介護をするにあたって大切な心構えについてお伝えします。
自宅退院した親の介護するにあたって大切な心構え
突然、親を介護することになったら、とまどうことばかりなのは当たり前のことです。
「自分ががんばらなければ!」と考えてしまいますが、兄弟姉妹や、周りの人にうまく頼るよう意識してください。
いざ介護が始まって、思っていたより大変であれば、どんなことに困っているかケアマネージャーに連絡しましょう。
適切なサービスを紹介してくれます。
「1週間・1か月・半年ぐらいなら、ちょっと無理をすれば介護と自分の生活を両立できる!」
というとらえ方では、途中であなたがしんどくなってしまうかもしれません。
自分と家族の生活を守りながら、半年・1年と続けていける介護のカタチを探してみてください。
慣れるまでは失敗したと感じたり、親と言い合いになったり、続けていけるだろうかと不安になるかもしれません。
そんなときは、周りの介護経験者に相談してください。
話を聞いてもらうだけで楽になるかもしれませんし、アドバイスがもらえたら参考にしてみましょう。
地域に「介護者の会」のような悩みを共有できる場が設けられていることもあります。
そうしたコミュニティーに抵抗がなければ、利用を検討してみてください。
まとめ:親の介護は突然やってくる!退院までにできることは?【入院後期編】
この記事では、「親の介護が自宅で始まる前に退院までにできること6つ」について考えてきました。
①入院先の医療社会福祉士に相談する
②親が住んでいる市町村の地域包括センターに相談する
③地域包括センターで要介護認定の申請をする
④要介護認定調査で聞かれることとこちらの情況の伝え方
⑤お試しで外出や外泊をしてみる
⑥退院前訪問指導をお願いする
という6つでした。
親の介護を継続するには、バランスをとることが大切です。
最初からがんばろうとは思わず、うまくいかなくても仕方ないという心構えで、退院してくる親を迎えてください。
シリーズ記事①はこちら
シリーズ記事②はこちら
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