「できれば親の介護をしたくない」
誰しもそう感じる瞬間があります。
実はわたしもそのひとりです。
ひとしれず悩んできた親との関係や家族の問題のために、親の介護をするのは無理だと感じる場合もあります。
ひとりっ子ゆえにすべてを自分でしなければというプレッシャーが原因かもしれません。
残念ながら現実は避けられないものです。
自分も含めて年令を重ねていく中で、親が介護を必要とする可能性は大きくなっていきます。
この記事では親の介護をしたくない場合に知っておくべき情報をお伝えします。
負担を軽減するために今からどんな備えができるかについてもご紹介します。
ぜひ最後までおつきあいください。
まずは、親の介護をしない方法があるかどうかについてお答えしていきます。
親の「介護をしない」方法はある?
親の「介護をしない」方法があります。
親の介護のうち「介護をしたくない」理由としてよくあげられるのは「身体的介護」です。
身の回りの手伝いや、お下の世話などの介助が含まれます。
金銭的な面で「介護をしたくない」という場合もあるでしょう。
それぞれご解説していきます。
親の身体的な介護が難しい場合
親のトイレや入浴、歯磨きや身だしなみを整えるのが苦痛になるケースがあります。
親の介護度にもよりますがデイサービスやショートステイなどの、介護サービスをめいいっぱい利用することが有効です。
経済的な余裕があれば、施設に入所してもらうことができます。
親が元気なうちから一緒に有料ホームの見学に行けば、入所がスムーズになるかもしれません。
親の介護において求められているのは「扶養の義務」です。
親に施設に入ってもらうことになるとしても、親の資産を活用し不足分を子どもたちで補っていれば、りっぱに親の介護をしていることになります。
金銭的に親を扶養するのが難しい場合
親との関係がうまくいかず、介護のための費用を負担することも苦痛だというケースがあります。
親がしっかり貯蓄していれば、自分のお金でサービスを利用し、施設で生活してもらうことが可能です。
介護が必要になった場合にお金がもらえる、民間の保険に加入しておいてもらうという手もあります。
多くの世帯では働いて受けとっていた給料よりも、年金収入のほうが少なくなるものです。
世帯収入が減少しているにも関わらず、生活レベルを調整できないケースがあります。
現役時代と変わらない生活をしていると、退職金や貯金を切り崩すことになりかねません。
親にそれとなく金銭感覚の見直しを促して、老後の資金を確保してもらうことをおすすめします。
親子関係の問題以外に、自分たちの生活を成り立たせるのが精一杯になるという状況もあります。
その場合は以下のステップを試してください。
親を扶養するだけの余裕がないことを、まずは扶養義務者である自分の兄弟に伝えてください。
経済的余裕があるかどうかで揉める場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
他の兄弟も親を経済的に援助することが難しければ、親の兄弟に助けを求めます。
親を経済的にサポートすることが、扶養義務者にとって難しいという点を相談します。
親に生活保護を受給してもらうと、比較的安価な施設に入所できることもあります。
介護サービスや公的制度を活用し、負担を軽減できないか検討することをおすすめします。
一番シンプルな親の介護をしない方法は
一番シンプルな方法は以下のとおりです。
- 親に老後資金をためておいてもらう
- 親の財産から費用をまかなう
- 親が自分達だけで生活が難しくなった場合は施設に入所してもらう
身体介護は難しいけど、施設の費用の負担ぐらいなら…とお考えであれば、ぜひ早めに介護施設についての情報を集めることをおすすめします。
シニアのあんしん相談室 老人ホーム案内生活保護について、色んな意見があります。
子どもたち世帯が親の介護にかかる費用のせいで自分達の生活水準が守れないのであれば、親に生活保護を受給してもらうのは、生活保護制度の本来の目的にそうものです。
まずは市町村に相談することをおすすめします。
親の介護を拒否したい場合に知っておくべきこと
介護を必要とする親の面倒を見るのが、どうしても難しいことはあります。
たとえ事情が複雑だったとしても避けられない義務があるので、ご一緒に理解を深めておきましょう。
絶縁・不仲を理由に扶養義務を放棄することはできない
ながらく疎遠になっていたり、絶縁しているケースがあります。
しかし血縁関係である以上扶養義務を放棄することはできません。
自分の家族を養い、なお余裕がある場合は親を経済的に援助する必要があります。
親を援助する経済的余裕がない場合は、先程の項目で考えたように扶養の程度・方法を管轄の家庭裁判所に調停を申し立てます。
親が生活保護を受給できるようにサポートすることは貴重な働きです。
扶養義務以外にに知っておくべき法律
扶養義務は民法で定められたものですが、つづいて考えるのは刑法です。
民法は個人の間で生じた問題を扱うための法律になっています。
刑法は犯罪を犯したときに国がどのような処罰を科すかを定めた法律です。
介護放棄の問題でよくとり上げられる刑法には以下のようなものがあります。
刑法第三十章 遺棄の罪
第二百十七条
老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、一年以下の懲役に処する。(保護責任者遺棄等)
第二百十八条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。(遺棄等致死傷)
第二百十九条
前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
サポートや介助を必要とする親を放置してケガに至った場合「保護責任者遺棄傷罪」に問われます。
要介護の親を放置して死に至らせた場合「保護責任者遺棄致死罪」に問われることになるのです。
家族であるがゆえに難しい介護ですが、「何もしない」「必要な保護を与えない」ことは刑法に違反することを理解しておく必要があります。
親の介護をしたくないと感じる原因を分析
なぜ親の介護をしたくないと感じるのかは、人それぞれです。
これまで理学療法士として介護の分野に携わってきた中で、読み取れた理由をいくつかご紹介します。
親の介護の実態がわからずどう関わるべきか不安になる
心がざわついて逃げたくなる
近いうちに親の介護をしなければならないという状況でみられる反応です。
親の介護で何をすればよいのかわからず、「親の介護はやりたくない」という拒絶感をいだきます。
親の介護が始まることで自分の生活がどう変化するかわからず不安になるのです。
介護方法に不安がある場合は、訪問看護やヘルパーなどのサービスを活用することをおすすめします。
少しずつ介護に慣れることで介護が始まる前に抱いていた不安・拒絶感を緩和できる可能性があるからです。
ショートステイなどの宿泊サービスも利用し、介護から離れて自分の時間を持つことも忘れないようにしてください。
介護とプライベートのバランスの取り方についてはこちらの記事もおすすめです。
過去と家族関係がむき出しになるので親の介護は厄介
子どもは悪くないのに…
親の愛情に包まれ、穏やかな家庭で成長できるのが理想です。
現実にはそううまくいかず、何かしら不安定な家庭で大きくなることもあります。
親の愛情を兄弟間で不公平に感じている場合も、介護の必要が生じたときに揉める原因のひとつです。
叔父や叔母などの親戚が介護に口出ししたり、折り合いが悪いことも親の介護を難しくさせます。
子どもが親の面倒を見るのは当たり前
みんな順番に親の面倒を見てきたんだから
親の介護をするのは、さも当然と言わんばかりのことばは、子どもたちを傷つけます。
そんなときわたしは心の中で言い返しています。
それは親がきちんと子どもたちに対して、自分の役割を果たしてきてたらね。
親子の数だけ、それぞれに事情があるものです。
もしまわりに親の介護をかたくなに拒んでしまう人がいるとしても、どうかその人を否定しないであげてください。
義理の親との数十年来のわだかまりが介護を拒否させる
そりゃもう無理と思うのも致し方ない
婿入りしたり、嫁入りしたり…と書きながら、なんか古臭いこと言ってるなぁと自分で思いました(笑)
嫁姑問題やお舅さんとのつきあいが、円滑な家庭ばかりではないことはいうまでもありません。
結婚して義理の両親が、子どもたち夫婦にどのように接してきたかがネックになります。
ひらたく言ってしまうと、”嫁いびり”してきたなというのはバレます。
自業自得だなぁと感じる一方で、
自分は「かわいらしい愛されるおばあさん」を目指さなければと身が引き締まる思いです(笑)
ここまで親の介護をしたくないと感じる理由について考えてきました。
つづいて親の介護をしない・最小限にするためにできる備えをご紹介します。
親の介護をしないために事前にできる備えとは?
宅配サービス・移動販売を活用
最初に親に援助を求められやすい分野は、買い物など外出の付き添いです。
元気なうちから、個別宅配サービスで買い物をする習慣をつけておくのがおすすめです。
最初の申込の手続きを手伝って支払いは親に任せることで、遠慮なく好きなものを買って買い物を楽しんでもらうことができます。
新しいことをはじめるのが億劫になる前に個別宅配サービスを導入することで、親が自立して買い物ができ介助量を軽減するのに有効な手段になります。
地域によっては高齢者が買い物難民にならないように移動販売のトラックが来てくれることもあります。
親が住む地域に移動販売のサービスがあれば、活用してもらいましょう。
預金・保険・財産の把握は、早ければ早いほど管理しやすくなります。
「もし急に意識がなくなって病院に運ばれたときに支払いができなかったら困るから、お金がどこにあるか教えておいて」
といった感じで情報を引き出してください。
親の介護について、あらかじめ兄弟姉妹で話し合っておくことも重要です。
身の回りの介助が必要になったら早めに介護保険を申請し、サービスを利用することをおすすめします。
家族以外のサポートを利用できるように、事前に介護サービスや施設の情報を集めておくことも役立ちます。
そして
本当に
どうしても
親にかかわるのが無理だと思ったときは
「家族代行サービス」を検索してみてください。
費用はかかりますが、親の介護によるダメージを最小限におさえることができます。
代行業者にもよりますが、医療・介護・相続関連・片付け・葬儀などを請け負ってくれます。
親のために何もしていないわけではないので、刑法で罰せられる心配も不要です。
家族代行サービスについて知っているだけで、
自分が耐えきれなくなったときに任せられるところがあるという、心のよりどころになります。
まとめ:親の介護をしたくない!介護が始まる前に自分にできる備えとは?
この記事では親の「介護をしない」方法について考えてきました。
一番シンプルな方法は以下のとおりです。
- 親に老後資金をためておいてもらう
- 親の財産から費用をまかなう
- 親が自分達だけで生活が難しくなった場合は施設に入所してもらう
親にはしっかり老後の資金を貯めるよう促します。
親の介護を最小限に抑えるため、元気なうちから個別宅配で買い物をしたり、移動販売を活用することが役立ちます。
兄弟姉妹で早めに親の介護について話し合う機会をつくってください。
備えて手を尽くしても、やっぱり難しい場合は地域包括センターに相談したり、生活保護について検討することも視野に入れます。
親の介護を受け入れられない原因は人それぞれです。
自分の心と身体をまもりつつ、落とし所が見つかるよう応援しています。
親の介護に疲れたときはこちらの記事もおすすめです。