前回の記事では、「親の介護が必要になる原因」についてお伝えしました。
親が入院し後遺症が残らず回復して、元通りの生活に戻れるのは何よりです。
しかし、生活面での介助が必要になりそうな場合、子どもたちには何ができるでしょうか。
この記事では「親が入院して介護が必要になりそうな場合に最初にできること3つ」
そして「一人っ子の場合にできること」についてお伝えします。
いろいろな家族を見てきた現役理学療法士としての経験、加えて実際に筆者が義両親の介護で感じた大切なポイントを含めました。
まず介護に備えて、入院初期に子どもたちがやっておくべき3つのポイントをご紹介します。
お急ぎの方はこちらの記事を先にどうぞ
退院後の親の介護に備えて最初にできること3つ
退院後の親の介護に備えて、最初にできる3つのポイントは以下の通りです。
- 親の介護について、兄弟姉妹がいたら話し合う
- 親の介護に関して役割分担を決める
- 親の介護について起こりやすいトラブルを想定する
それぞれご解説してまいります。
①親の介護について兄弟姉妹がいたら話し合う
早めに子どもたち全員のスケジュールを合わせて、話し合う場を設けましょう。
LINEでグループを作ったり、zoomを利用したりしてオンラインを活用すると良いかもしれません。
介護に関する親の希望を共有する
もし親が事前に、自分が介護を必要とする状況になったらこうしてほしいという希望を伝えていたのであれば、その情報を兄弟間で共有してください。
- 自宅近くの施設に入ることを希望している
- 誰かと同居したいと考えている
- 子どもたちの近くの施設に入ることを希望している
- 子どもたちのうちの誰かの家の近くに引っ越したい
その希望をかなえることが可能か、それとも現実的でないかについて話し合います。
可能なら親が元気なうちに
老後の生活についてどんな希望を持っているか
介護が必要になった場合に何を期待するか
聞いておくのが理想です。
親が元気なうちに子どもたちも含め、家族全員でエンディングノートを作成しておくこともおすすめします。
親の介護について話し合うときは率直に伝える
親の介護が必要になるタイミングは、子育て世代にとっては共働きで学費の準備をしていたり、すでに配偶者の親の介護をしているタイミングと重なることがあります。
子どもたち全員が、自分の家族の状況を率直に話すことは、親の介護に関して不可欠です。
以下のポイントについて、どれぐらいのサポートが可能か伝えて介護の方向性を決めることができます。
- 親の介護のために使える時間帯や曜日
- 親の介護にかかわる頻度
- どんな介護内容なら親に関われるか
- 親の介護のために可能な金銭的負担
ひとつずつ見ていきます。
- 親の介護のために使える時間帯や曜日
午前・午後・平日・週末の方がいいなどの希望をだします。表を作って具体的にわかりやすくするのがおすすめです。
- 親の介護にかかわる頻度
週◯回、月◯回など、どれくらいの頻度が可能かを伝えます。
- どんな介護内容なら親に関われるか
身の回りのお世話・買い物のサポート・受診時の付き添いなど、介護の必要な分野を軸にどんなサポートができるかを話し合います。
- 親の介護のために可能な金銭的負担
各自の経済状況を考慮し、いくらまでなら負担可能かを提案し合います。
兄弟姉妹は、それぞれの状況をお互い理解することが必要です。
次の項目では役割分担についてお伝えします。
②親の介護に関して役割分担を決める
介護に備えて、役割分担を決めておくと、子どもたちのうちの誰かに負担が集中するという状況を軽減するのに役立ちます。
親の介護のキーパーソン(主介護者)をまず決める
キーパーソンの役割には以下のようなものがあります。
- ケアマネージャーやほかのサービス事業者との話し合いの窓口となる
- 主治医から話を聞いて、ほかの兄弟姉妹に情報共有する
キーパーソンは子どもたちのうち、親の近くに住んでいる・同居している方が担当することをおすすめします。
ケアマネジャーや利用するサービスの事業所にアクセスしやすく、連携を取りやすいからです。
親の介護にあたって資産管理者を決めておく
資産管理者は、親の年金・その他の収入の有無・貯蓄・資産などを把握するのが役割です。
医療費・介護サービスを受けるときの費用は、親当人の資金から支出します。
親の経済状況のために、必要な出費を当人のお金だけではまかないきれない場合は、費用の負担割合について決めておくのがおすすめです。
③親の介護について起こりやすいトラブルを想定する
一番トラブルの原因になるのはお金の話です。
それぞれ、配偶者や子供がいます。
まず我が家の経済状況と家族を守りたいと思うのは当然です。
以下の2点を意識して、トラブルの軽減に役立ててください。
- 血縁関係にある子どもたちには親の介護義務が民法上定められている
「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」(民法第877条第1項より引用)
(民法第877条第1項より引用)
これは、親が介護を必要とする場合、お金の面で扶養する義務があるという意味です。
兄弟姉妹全員が、この義務について共通の認識を持つことは、お金に関する話し合いをする助けになります。
お金は、もめやすくデリケートな問題です。
実際、筆者の義兄弟もお金で揉め、介護にどれほど関われるかについて何度も話し合ってきました。
親の介護について話し合うのは、とても力のいることです。
協力的でない家族がいれば、なおさら気が重くなります。
それでも介護が始まる最初が肝心です。
最初の話し合いから期待通りにはいかないかもしれません。
兄弟姉妹で時間をおいて再度話し合うなどして、落とし所を見つけるようにがんばってみてください。
- 親の介護について話し合った内容を記録して残しておく
親の介護について家族会議をする際には、必ず記録を残すことをおすすめします。
記録があることで、「言った!」「言っていない!」という記憶のずれをなくすことができます。
毎回の話し合いの時には、ささいなことでも文章の形で記録を残してください。
親の介護をするのが一人っ子の場合
介護を必要とする親の子どもが一人っ子の場合、親の兄弟姉妹が元気であればサポートしてもらえないか相談してみることをお勧めします。
親の入院中に感じている不安や気になることを担当看護師に伝えることも役立ちます。
次の記事でも解説しますが、医療社会福祉士(メディカルソーシャールワーカーとも呼ばれる)に自分の生活状況を話して一緒に考えてもらうのも良い方法です。
ひとりで抱え込んで悩むとしんどくなってしまうので、医師に相談しにくければ、リハビリスタッフでも薬剤師でも誰でもいいので、困っていることを遠慮なく伝えてください。
まとめ:親の介護は突然やってくる!退院までにできることは?【入院初期編】
ここまで、「親が入院して介護が必要になりそうな場合最初にできること3つ」と「親の介護をするのが一人っ子の場合」についてご紹介してきました。
親が入院して介護が必要になりそうな場合、最初にできること3つは以下のとおりです。
- 親の介護について、兄弟姉妹がいたら話し合う
- 親の介護に関して役割分担を決める
- 親の介護について起こりやすいトラブルを想定する
家族会議で話し合うポイントや、トラブルを軽減する方法がお役に立てれば幸いです。
続くシリーズ記事②「親の介護は突然やってくる!退院までにできることは?【入院後期編】」では、実際の介護が始まるまでにできる備えについてお伝えします。ぜひご覧ください。
シリーズ記事①をまだご覧になっていない場合はこちらをご参照ください。