親の介護で「介護うつ」?40代以降の男性介護者が要注意な理由

親の介護で「介護うつ」?40代以降の男性介護者が要注意な理由

早期退職して、母親の介護をはじめて半年が過ぎて…

最近なんだか自分の体調がすぐれないなぁ…と感じられることはありませんか?

母親の介護をがんばってくれていた父親も、最近は「おーい」と手助けを求める。

ちょっと疲れがたまってきたのかな…

こんな症状に思い当たるふしがある、あなたは要注意かもしれません。

  • 食欲低下
  • 不眠
  • 起きたときの疲労感
  • 倦怠感
  • 焦燥感
  • 考える力・スピードの低下

この記事では「介護うつ」かもしれないと自覚したときに、まずすべきことについてお伝えします。

40代以降の男性介護者が上のような症状を感じたときに、注意が必要な理由についてもご解説します。

「介護うつ」の原因・なりやすいタイプ・対策方法についてご一緒に理解を深めてまいりましょう。

目次

「介護うつ」かもと思ったらまず受診を!

立って前傾姿勢の男性のイラスト。白目で表情がなく疲れ切っている。

冒頭でご紹介した下記の症状に思い当たるところがあり、2週間以上体調がすぐれないなら病院を受診することをおすすめします。

  • 食欲低下
  • 不眠
  • 起きたときの疲労感
  • 倦怠感
  • 焦燥感
  • 考える力・スピードの低下

受診するのは心療内科または精神科です。

早期に的確な診断を受けることで、治療を受けることができます。

感情的・精神的な不調の治療は、早ければ早いほど短い期間で回復しやすいことをきっとご存じでしょう。

心療内科・精神科というと抵抗を感じるかもしれませんが、不調を抱えたまま家族の介護を続けるのは危険です。

上記の症状以外にも、以前はなんなくできた用事をこなすのがおっくうに感じることはありませんか?

趣味として楽しんでいた活動が楽しめなくなったり、その気になれないと思うことがありますか?

気力や体調の変化を感じておられる場合には、思いきって受診されることをおすすめいたします。

40代以降の男性介護者がうつ症状に要注意な理由とは?

床に座り込んでいる男性のモノクロのイラスト。頭を抱えこんでいる。

40代以降の男性が前述のような症状を感じた場合、「男性更年期障害」の可能性もあるので注意が必要です。

男性ホルモンのひとつに、テストステロンというホルモンがあります。

テストステロンの分泌量は、10〜20代がピークです。

20代以降は個人差がありますが、ゆるやかに減少するケースが多いといわれています。

テストステロンの重要な働きのひとつは、大脳への作用です。

テストステロンの働きにより、ポジティブに物事を考える・決断力を発揮する・やる気を出すことができます。

テストステロンが減少すると、以下のような症状が現れます。

  • 性欲の減退
  • 身体能力の低下
  • すぐに疲れる・倦怠感
  • 頻尿・残尿感
  • やる気・集中力・記憶力の低下
  • 不眠などの睡眠障害
  • 不安・焦燥感
  • 頭痛・めまい・耳なり
  • 発汗・のぼせ

うつ症状とよく似ていると、お気づきになられたかもしれません。

テストステロンの減少に大きく関わっているのが、「加齢」と「過剰なストレス」です。

早期リタイアして介護をはじめたものの、思ったより大変なことに気づきます。

自分の兄弟姉妹も離れた場所に住んでいて、それぞれ家庭をまわすのに必死です。

家事の応援を頼むこともできず、家の中が片付かなくなります。

母親はできることが減り、身の回りの手伝いを必要とする場面が増えるかもしれません。

父親も今はなんとか自分で自分のことができていますが、危なっかしいと感じることもしばしばです。

家族の現状をみていると、早期リタイアは正しい決定だったと客観的には思えます。

でも同僚がまだ働いていることや、老後の楽しみについて聞くと、ふと虚無感におそわれるのも無理はありません。

親を在宅で介護することは、過剰なストレスの原因になりえます。

加齢と過剰なストレスが原因で、男性更年期障害が起きている可能性は否定できません。

自分が今感じている身体的・精神的な不調の原因について知るためにも、病院を受診されることをおすすめいたします。

お近くに男性更年期外来・メンズ・ヘルス外来を標榜している病院があれば、そちらをご受診ください。

テストステロンの減少は血液検査で確認できます。

専門外来がない場合は、一般内科で症状について相談し血液検査を受けることが可能です。

親の介護もありますが、体調不良がつづいている場合は、ご自身の健康を優先させてください。

親の介護で生じる「介護うつ」の原因とは?

「介護うつ」の原因には、以下のようなものがあります。

  • 精神的ストレス
  • 身体的な負担
  • 経済面でのストレス
  • 孤立

ひとつずつ、ご解説してまいります。

親の介護や慣れない家事が精神的ストレスになる

杖を突きながら歩く高齢男性のイラスト。

仕事では勤勉な働きが評価され、昇進・昇給という結果が得られました。

そうはいかないのが介護です。

なんとか予定をこなそうと計画を立てても、母親に介助に呼ばれると、時間が過ぎていきます。

やっと用事にとりかかれると思ったら、父親が「おーい」と自分を探しています。

気づいたら食事の時間がせまっていて、なんとか両親に食事を出すだけで精一杯です。

スキマ時間に家事をこなして、母親の介護と父親の呼び出しに対応していたら一日が終わります。

両親の寝支度が終わって、自分の部屋に帰ったとき「1日、何やってたんだろう…」とふと感じるかもしれません。

自分の思うようにタスクが片付かず、働きが評価されないというのはつらいことです。

男性にとって仕事を辞めることは、それだけで大きなストレスの原因となることがあります。

毎日関わっていた同僚や部下との時間はなく、自分が築いてきた社会的立場が大きく変わるからです。

両親と自分だけの生活に変化すると、自尊心を保つことが難しくなります。

ご両親は自分達のために早期リタイアを選んでくれたあなたのことを、誇りに思い感謝を伝えてくれるかもしれません。

ただそれだけでは満たされない感情があり、虚無感・精神的ストレスにつながることがあります。

介護からくる身体的な負担で疲労が蓄積される

ミツバチが両手に蜂蜜の入ったツボを持って飛んでいるイラスト。表情はなく白目になって疲れている顔。

介護は体力勝負です。

理学療法士の仕事は「白衣の躯体(くたい)」と言われることもあります。

躯体とは一般的に建物の構造体となる基礎・柱・梁を指すことばです。

理学療法士を「躯体屋」と呼ぶことで、肉体労働の激しさを表現しています。

理学療法士の業務とは違い、在宅介護は24時間フル稼働です。

身体的な疲労が蓄積されるのも、無理はありません。

介護費用が経済面のストレスになる

黒板の前に頭を抱えた男性が立っている。男性ののマスクや黒板には「STRESS」の文字がたくさん書かれている。

早期リタイアで退職金というまとまったお金があるとはいえ、3人暮らしの家計を管理して支出をみていると、不安に感じることがあるかもしれません。

親の介護や身の回りのものは、年金を使います。

でも細々とした出費を支払っていると、けっこうな額のお金が必要です。

貯金額が目減りしていく通帳を見ると、不安を感じるかもしれません。

経済的な圧迫感は気づかないうちに、ストレスの大きな原因を占めている可能性があります。

介護に理解を示してくれる存在が見つからず孤立する

腰に手を当てて、ひとりたたずむ男性のイラスト。

孤立は介護者にとって、大きな敵です。

同年代の元同僚たちに介護の大変さを理解してほしいと思う反面、弱音をはいているようで話題にするのをためらうことがあります。

同情されるだけなら、話す必要もないと感じるのです。

だんだん話題が合わなくなり、飲みに出かけることも気が進まなくなるかもしれません。

一概には言えませんが男性は女性に比べると、他人に弱みを見せることを好まない傾向があります。

誰にも話せず助けを求めるタイミングを逃してしまいがちです。

孤立してひとりで抱え込むことで、うつ状態になってしまうことがあります。

ここまで「介護うつ」の原因について、ご解説してまいりました。

「介護うつ」は一つの原因で発症するのではなく、原因が複雑にからんで心身の不調に至ります。

つづく部分で「介護うつ」になりやすいタイプ・「介護うつ」対策についてお伝えしてまいります。

こんなタイプは「介護うつ」に要注意!

モノクロの男性のイラスト。前かがみで両手を太ももにつき、疲労感が現れている。

「介護うつ」になりやすいタイプがあるといわれています。

  • 責任感が強い人
  • 使命感を感じる人
  • まじめ・几帳面な人
  • 完璧主義の傾向がある人

家族のために早期退職ができる、あなたの決断力は本当に尊敬に値します。

その責任感の強さ・自分がやらなくてはという使命感は、在宅介護において自分の首を絞めてしまうことがあります。

自分の体調がすぐれないのに、他人に任せられず自分がどうにかしなければと考えてしまう場合は注意が必要です。

介護は思い通りにいかないことの連続です。

1日の予定を思うようにこなせない日が多々あります。

計画通りにタスクを進めたい・きっちりこなしたいという、一種の完璧主義や几帳面さが介護では、裏目にでる可能性は否定できません。

用事を済ませるために、自分のことをついつい後回しにしてしまいます。

結果としてストレスがたまり、体の不調を感じたときには、すでに精神的にも追い込まれているのです。

今日からできる「介護うつ」対策3つ

今日からできる「介護うつ」対策は以下の3つです。

  1. 「自分は介護で疲れている」という自覚を持つ
  2. 介護サービスを見直す
  3. 兄弟姉妹に随時両親の状況を伝える

ひとつずつご解説してまいります。

①「自分は介護で疲れている」という自覚を持つ

男性が両手を垂れ下がらせながら前かがみで歩いている。ふきだしにはバッテリー切れの電池が描かれている。

自分の状況を客観的に評価するのがおすすめです。

このようなサイトがあるので、ときおりご自身の状況を見つめ直すのに活用します。

うつの症状を自己チェック

男性は女性より体力があるとはいえ、介護は重労働です。

身体的な疲労と精神的な疲労が、同時に発生することもあります。

「今日は自分の体調があまり良くないから、この作業は明日にまわそう」

自分のコンディションを軸に、優先順位の高いタスクがこなせたら良しとする考え方がおすすめです。

忙しいと自分の食事がないがしろになります。

しかし健康にはバランスの取れた食事・十分な睡眠・適度な運動が不可欠です。

健康管理は大切な自己管理の一面であることを、よく理解しておられることと思います。

退職後もぜひ健康管理をおろそかにせず、疲れたら休むことを意識してください。

②親の介護サービスを見直す

男性が机に向かいパソコンの横で、メモをしている。

介護サービスを見直す目的は、介護者のあなたの時間を確保することです。

母親のケアプラン作成を担当してくれている、ケアマネージャーに相談します。

母親の介助量が増えていること、父親にも手がかかり始めていること、自分の介護疲れについてもご相談ください。

たとえば母親を老人保健施設の短期入所にお任せして、リハビリをしてもらう方法があります。

最大30日連続で利用可能です。

リハビリで母親の身体機能が向上すれば、介助量が減ります。

入所期間中に、あなたの生活リズムを立て直すことも可能です。

父親の介護認定の申請を検討してみるのはいかがでしょうか?

認定があればデイサービスなどの、介護保険のサービスを利用することができます。

介護保険の認定がなくても、各自治体が実施している高齢者向けの体操教室が活用できるかもしれません。

父親も運動の習慣がつくと、自分でできることが増える可能性もあります。

ひとりで背負い込まず、積極的にサービスを活用するのがコツです。

ケアマネージャーや福祉用具の業者など、話しやすい相談相手を見つけておくこともおすすめいたします。

③兄弟姉妹に随時両親の状況を伝える

パソコンの横にノートとペン、スマートフォンが置かれている写真。

遠くに住む兄弟姉妹に両親の状況を伝えておくと、いざという時に即戦力となってくれます。

自分の兄弟たちに弱音をはくのは、気がひけるかもしれません。

しかし彼らにも親の介護に関して扶養義務があるのは事実です。

経済面の負担がストレスになっていることを率直に伝え、相談してみるのはいかがでしょうか?

あなたひとりでご両親の介護を抱え込んでしまう状況を、避けることが必要です。

可能であれば兄弟姉妹全員で親の介護負担について、話し合うことをおすすめいたします。

まとめ:親の介護で「介護うつ」?40代以降の男性介護者が要注意な理由

この記事では「介護うつ」かもしれないと自覚したときに、まず病院を受診することの大切さについてお伝えしました。

とくに40代以降の男性介護者がうつのような症状を感じたときに、男性更年期障害の可能性があるという点もご解説させていただきました。

「介護うつ」の原因は以下のとおりです。

  • 精神的ストレス
  • 身体的な負担
  • 経済面でのストレス
  • 孤立

「介護うつ」になりやすいタイプには以下のような性質があります。

  • 責任感が強い人
  • 使命感を感じる人
  • まじめ・几帳面な人
  • 完璧主義の傾向がある人

もしご自分が「介護うつ」になりやすいタイプに当てはまっていた場合は、3つの対策を実践なさることをおすすめいたします。

今日からできる「介護うつ」対策3つ
  1. 「自分は介護で疲れている」という自覚を持つ
  2. 介護サービスを見直す
  3. 兄弟姉妹に随時両親の状況を伝える

この記事の情報が在宅介護をがんばっておられる、皆様のお役に立てば幸いです。

親の介護がつらいときは、こちらの記事もご参照ください。

親の介護でイライラするときの3ステップについては、こちらの記事をご参照ください。

在宅介護の限界を見極めるポイントについては、こちらの記事をご参照ください。

介護者のセルフケアについては、こちらの記事をご参照ください。

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